最近マイケル・ナイマンの楽曲をあさっているんですが、マイケル・ナイマンといえばやっぱりピーター・グリーナウェイではないでしょうかね。
グリーナウェイの作品の多くはナイマンが音楽を担当しとりますんで。
最初に観たのは「英国式庭園殺人事件」でしたが20分程度で寝てしまったような気がします。
このじいさんの作品はなにしろ難解なんですね~。
ストーリーもなんですが脚本も抽象的でして、なんのこっちゃかさっぱりわかりません。
カメラワークやカット割りも少なくロングパースの固定シーンが結構多いせいで眠気を誘うにはもってこいなんでしょう。
ですが「ZOO」を観てはまりました。
というか鑑賞のコツを掴んだと言った方がイイかもしれませんが。
前述したように難解ではあるんですがその映像美といったら、それはもうスンバラシイ~です。
独特の構図に加え、腐ったもんやキモイもんをこれほど美的に表現する監督はまれなんじゃないでしょうかね。
ジョン・ウォーターズに鼻くそでも煎じて飲ませたいところです(ウォーターズ作品はその低俗で汚らしいところが魅力なんですが)
さらには少ないカメラワークもあいまってその一つ一つを絵画のように捉える事ができます。
グリーナウェイ自身にもその意図があると思いますよ。
幼少時は画家志望だったみたいだし。
そのうえこのじいさんはアーティスティックな短編も多数撮っていますしインスタレーションやオペラの製作にまで出張っているみたいですからね、映画監督というよりアーティストなのかもしれません。
たまたま自分の世界観の表現手法が映像だった・・・みたいなね。
そんなわけでワタクシがはまるキッカケになると同時にグリーナウェイ映画では大好きな作品「ZOO」をご紹介。
本題は「A Zed & Two Noughts」であります。
当然、音楽はマイケル・ナイマンが担当。
しかもジェーン・カンピオン監督の「ピアノ・レッスン」のテーマ「The Promise」と並び大好きな「Time Lapse」(料理の鉄人の勝者発表を待つシーンにも使われてましたね)が挿入されとります。
愛人、アルバは「ブリキの太鼓」のアンドレア・フェレオルが演じています。
ストーリーはハッキリ言って脳みそぷるんです。
動物園勤務で動物学者のオズワルドとオリヴァー(アクターはよう知りません・・・)という兄弟がおりまして、それぞれにこれまた仲良しの嫁はんがいたんですが、とある日嫁はん同士とその友達、アルバ(アンドレア・フェレオル)運転の3人の載った車が白鳥に衝突してアジャパーに。
しかも兄弟の勤める動物園の前でです。
これがオープニング部分なんですが、その事故で嫁はん2人は死亡、アルバも片足切断とあいなります。
オープニングに挿入されている片足の無いゴリラの観測シーンは暗示的な描写なんでしょうか。
この事故を期に生と死について考えてしまったんでしょうかね~、兄弟は動物が死んでから朽果てていく状態を記録したり、生物の進化をたどった映像に取り付かれるようになります。
さて、ここからがいけません。
というか、訳がわかりません。
「おまえの運転のせいでボクちん達の奥さんは死んじゃったんだぞ~!! 奥さんを帰せ~!!」などという凡人以下の思考は露知らず、なぜかアルバと兄弟どんぶりしちまいます。
もちろん兄弟共に納得のうえであります。
ラース・フォン・トリアー監督の「奇跡の海」を観たときもそうでしたがいろんな愛の形があるもんですね~。
もっとリアリティにとんだ精神的レベルでしたが・・・
そんなこんなで3人の生活は始まるんですが、なぜかオズワルドとオリヴァーはざ・タッチ状態に。
見分けがつかんほどクリソツになっていきます。
さらに、「どっちの種だ?」などという凡人以下の思考はほっぽって双子を妊娠しちまいます。
これはもう医学的云々はさておき兄弟それぞれの子共って事なんでしょう、シンメトリカル的な目線に立てば。
そして出産。
しかしアルバは残された片足も切断するはめになり、手術と出産による衰弱からあの世に。
「アルバも死んじゃったよ~!! どうしようかボクたち」という事で導き出した答えは、自分達の腐敗過程を記録するという凡人じゃなくても頭パッカ~ン!!なラスト。
「スクワーム」を観てパスタが食えなかったようにエスカルゴが食えなくなる事受けあいです(ちょっと違うか)
とまあ訳わからんあらすじですが、つまりは「シンメトリー」と「結合」なんじゃないでしょうかね。
原題「A Zed & Two Noughts」はZと2つのO、つまりはオズワルドとオリヴァーを意味してるんだと思います。
しだいにクリソツになっていく兄弟、2人が共有するアルバ、双子の妊娠&出産。
すべてのバランスが対象に保たれていますよね。
アルバが片足を切断する事で生じるアシメトリーですが、もう一方の足の切断によりシンメトリーに再製。
そして生命の死と腐敗、大地との結合です。
兄弟はその外見から挙動までも同一化し、死して一体となる。
さらには、これでもかという程描写されるシンメトリックな映像美の数々。
後半、兄弟が着ている一体化したスーツは2人の精神的結合を表現するに多大なインパクトを与えると同時に、立体造形におけるアート作品としてもアリなんじゃないでしょうか(飛躍しすぎかもしれませんが)